社会の小窓

ラムネとペット・ボトル世代


梅雨から夏へと加速度的に季節が変わっていきます。日の出が早く、日の入りも遅くなり子どもたちの屋外での活動時間がグーンと長くなりました。暑い外で汗を流せば、ノドが渇く、そして冷たい飲み物が美味しい季節の到来なのです。日本中何処に行っても自販機やコンビニがあるので、育児中のお母様方にとっては、昔ほど飲み水に注意を払う必要がないと私は思っておりました。ところが、それは私の認識不足で、昔のお母さん以上に飲み物に気を使っているのが今時のお母様のようです。
私が子どもの頃は自販機など無く、必ず自分用の水筒持参で外出です。ですから店先でラムネを飲める時など、もう嬉しくて嬉しくて、気持ちは舞い上がっていました。生まれて初めて自販機でコーラを買って飲んだのが大学生のときですから、年がばれます。ビンから缶の時代が過ぎペット・ボトルになり、次世代の容器は紙缶なのだそうですが、ペット・ボトル時代の女の子が今母親の多数を占める時代なのです。自分専用の水筒ではなく、ペット・ボトルに入った自分好みの飲み物を常に携帯して育った時代なので、飲み物に対する考え方が、昔の私の時代のようなただ単にノドの渇きを癒す水ではなくなっているのです。かなりの思い入れと同時に一種の中毒的「飲み癖」のようなものがあるといわれています。さて皆さんはいかがですか?
イオン飲料水を飲み始めると、中毒とまではいかないまでも、飲み癖がついてしまうようです。清涼飲料水に比べると体に良さそうなのですが、健康を維持増進するための飲み物とは違います。「スポーツ・ドリンク」の「スポーツ」や「イオン飲料水」の「イオン」が音や言葉として聞こえが良く、とても体に良さそうなのですが、むし歯の原因になっていることは知られていません。「ジュースより怖いイオン飲料水!」お忘れなきよう!!

Written by 浜野 良彦


元気の源は子どものミラクルパワーから!


「お母さんとちょっとお話するから、ゴメンね!」と子どもに了解を得てからお母様とお話をするのが、私の決め事になっています。勿論治療をしながらになりますので、子どもに話しかけては、お母様に返事をすると言った具合に、チョー忙しい状況の連続です。お母様とのお話が治療の中でも重要な役割をしています。治療の説明だけでなく例えば、うちの子は、「歯磨きを嫌がる」、「自分では磨くのだけど、私には磨かせない」こんなお母様方からの相談は日常的な事なのですが、答えが1つというわけにはいきません。皆さんそれぞれ生活環境、習慣が違いますから、答えを出すまでが一苦労です。結果として私がお話しする内容も異なってきます。そんなこんなで、治療が終わると口が乾きノドはガラガラ。そこで、うがいをしては、またしゃべる事になります。
お話しする内容はほとんどが育児支援的なもので、口の健康と言えば「食事」や「おやつ」だけを考えがちですが、子どもの衣・食・住はもとより、遊びとか睡眠など日常生活習慣についての関連を考慮しながらお話しすることになります。子どもの歯医者は、子どもに関するいろいろな情報を必要としています。子ども達の生活環境がめまぐるしく変わる現代では、私の古い頭脳では上手く消化できない情報がたくさんあり過ぎます。そんな時、子ども達の行動を見習うことで、硬くなった私の頭脳でも何とか働いてくれるようです。ですから、偉そぶらない、先生面しない、年寄り臭くならないなど、自分を律する気持ちで身体中がいっぱいになり、元気を取り戻すことができるのです。子どもの歯医者は年を増すにつれ、厳しく辛い仕事になりますが、子ども達のミラクルパワーで楽しい仕事に大変身してくれます。さ〜て、明日はどんな出来事が待っているのやら!

Written by 浜野 良彦


知っていますか「打ち水」の楽しさを!


今年の夏の暑さは、ことさらに厳しいように私には感じられます。私の年齢がそう感じさせるのでしょうか?それとも地球温暖化? 診療室の子ども達は、どの子もみんな、今年も真っ黒に日焼けしています。そんな子ども達を見ては「元気いいなあ〜」と、この猛暑の中で外遊びを楽しんでいる子ども達が、羨ましくて仕方ありません。昔は「先生の方が黒い。すごいでしょう!」なんて競い合ったものです。子どもの頃から、「私の姉は色白、私は真っ黒」と母親に言われ続けていましたので、生来私は色黒なのでしょうが、今年の子ども達には負けてしまいました。ですから、日焼けした子ども達が羨ましい反面、逞しさを感じるのです。
でも私が子どもの頃の日焼けと、今時の子の日焼けは少々違っているようです。問題は紫外線。夏に太陽の光をたくさん浴びると冬に風邪をひかないなどと言われて、夏場の日焼けは健康法の一つでしたが、現代では日焼けしないように注意しなければならないのですから、厄介な環境になりました。診療室では、以前に比べて日焼けを嫌う子が増えているようで、暑い夏の話をすると「地球温暖化」という言葉の意味を知っている子が多いのに驚かされ、地球環境の話をする子もいるくらいです。暑い夏を楽しむ時代が終わったと考えるには寂しすぎるので、日焼けを競い合い、夏の暑さを子ども達と一緒に楽しみたいものです。最近のトピックスでは、「打ち水」を地域全体で実施する所が増えていることです。涼しい夏や心地よい夏を楽しむのは昔からのことで、子ども達にとって「打ち水」は、楽しい夏の思い出になるはずです。

Written by 浜野 良彦


今も昔も楽しいクリスマス!


年々歳々、冬が暖かくなっているような感じがします。私が子どもの頃の今時のシーズンは、「子どもは風の子、元気な子」などと強がりを言っては、冷たくなった手に暖かい息を吹きかけ手を温めながら外で遊んでいたものです。教室掃除の時の雑布ガケは冷たい水の思い出しかありません。アカギレ、シモヤケは当たり前。小学生の頃、ズボンのポケットを母親が縫い付けて手を突っ込めないようにしていた凄い親子がいたことを思い出しながら、半世紀前の日本の子ども達と今時の子ども達との違いに、あれやこれやと思いを巡らしています。
診療室での子どもとの会話は、やはりクリスマスの話題に集中します。サンタクロースに頼んであるプレゼントが何かとか、それをお母さんに頼んでおくとサンタさんが必ず届けてくれるとか。それはそれは夢のある話ばかりです。私だって子どもの頃はサンタクロースの存在を信じて疑わなかった一人で、クリスマスの日には枕元に置いてあった靴下にアメリカ製のキャンディーがいっぱい入っていて、何故かお風呂場に大きなおもちゃまで届けてもらいました。そしていつの日かサンタは父親や母親であることを知るのですが、それまでのプロセスが皆違うようで、大人になってからの昔話としては結構面白いのです。
診療中はサンタの存在を信じ切っている子と、存在を疑っている子と、すでにサンタが親であることを知っている子とでは、私の話の内容は違います。あちらでは信じ切っている子に「ソウ、ソウ」とうなずき、こちらでは疑っている子に「ウン、ウン」と頭の中はぐちゃぐちゃ。そんなこんなで診療室の壁には、私の好きなリシー・マーチンのほのぼのと暖かいサンタクロースにちなんだ絵がいっぱいです。やはり今も昔も変わりなく12月は楽しいことだらけです。

Written by 浜野 良彦


丸くて大きなテーブル・カウンター!?


外気が冷たく感じる季節になると、スタッフの汗ふきタイムが活気づきます。治療が終わった子ども達の頭や背中は汗でぬれていることが多く、そのまま外に出ると風邪を引いてしまいます。ですから、治療後はドライヤーでの汗ふきタイムは欠かせません。私も好んで汗ふきタイムに参加します。汗を乾かしながらスタッフは、上手に治療ができたことを褒めたり励ましたりと、手際よくスタッフの手が美容師のように子どもの髪を撫で回します。ベタベタした髪の毛がサラサラになるうちには、スタッフの手を通して子どもと心がつながるのが不思議です。これはなかなか良い光景です。しかも心理的に治療の締めくくりにもなるのです。子ども達は治療が終わった開放感とともに優しさと励ましの汗ふきタイムで、元気倍増して診療室を動き回ります。
受付のスタッフは全員、保育士の資格を持っていますので、汗ふきタイムだけでなくお漏らしした子のお尻拭きから泣いている赤ちゃんのお世話等々、通常の歯科医医院のように座って仕事をすることはありません。ですから私たちの医院では受付のカウンターは高い丸テーブルになっていて、360度が行動範囲となっています。お母様方とは立ったままお話しするので目線の高さが同じ、そしていつでも瞬時に子どもの傍に行くことができるので、子ども達とも同じ高さの目線で話ができます。一日中立ったままでの受付の仕事は大変ですが、診療室に自由な空気を作っています。丸い大きなテーブルカウンターが生み出す新しくて不思議な環境は、待合室と診療室との境界線を取り除いてくれています。自由で明るい会話がスタッフと子ども達、お母様やお父様との間に交わされます。僕のことを忘れないで〜と無理矢理会話に割り込む私がいる毎日です。

Written by 浜野 良彦


手の秘められた不思議なパワー


仕事柄、幼稚園や保育園を訪問しますが、最近の園児の自立した行動には目を見張るものがあります。とりわけ、お友達の前に立って堂々とお話ができる子が多いのには、大人である私にもできない逞しさを感じるのです。私の子どもの頃などは、学芸会での合唱でも尻込みしたのに、今時の子は、みんなの前で一人で元気よく、「お部屋をきれいにお掃除しましょう!」とか「みんなで仲良く大きな声で歌いましょう!」などと先生に代わって自然体で言ってのけます。もじもじ恥ずかしがらずに言うこの自然体がすごいのです。
今時の子と比較にならないほど緊張する私は、結婚披露宴でのスピーチが苦手。ですから気持ちを落ち着けるために、必ず何かを握り締めて話をすることにしています。左手にマイク右手にハンカチ。となるわけで、効果抜群で冷や汗を流しながらでもスピーチを無事務めることができています。似たようなことを私の診療室では実践しています。歯科治療の恐怖や不安を和らげるために、幼い子どもたちは、「左手に手鏡、右手はお母様の手」から始まり、治療に慣れてくると「左手に手鏡、右手に犬のぬいぐるみ」と変化しながら、上手に治療が継続できるようになっていきます。手に意思があるわけではないのに、手には心を落ち着ける何かが存在するようです。握手をして親愛の情を表し、拍手をして自分の意思を伝え、時には手に汗を握る緊張感を味わうなど、手はとても不思議な働きを持っています。
子どもを頭ごなしに叱るのではなく、しっかりと両手を包み込むように握り締めて目を見ながら諭すようにお話をすると効果があります。きっとそんな時には手と手を通して優しさや厳しさが伝わっているのでしょう。「手は飛び出た脳」という学者もいるくらいですから。

Written by 浜野 良彦


無愛想という遺伝子


泣き顔、笑い顔、怒り顔。人には多種多様な顔の表情があります。これは人類だけに与えられた奇跡的な能力で、言葉いらずのコミュニケーション方法です。直立二足歩行ができてから得た能力なので、ゴリラやチンパンジーなど人間に近い動物には表情がありますが、下等動物には顔の表情変化で意志を伝えることは無いのだそうです。眉の上げ下げ、口を尖らせ、目尻を下げたりと顔にある筋肉が感情の動きに連動しているのが不思議です。まだしゃべれない赤ちゃんの時代からこの能力を発揮して母親とのコミュニケーションを絶やすことがありません。赤ちゃんをジーッと見ていると、その表情だけで伝わってくる物があります。なんと摩訶不思議なことかと、感心します。
日々の治療を通して子ども達の表情から知り得るたくさんの情報があります。治療がイヤで哀しいのか、ふて腐れているのか、自分の意志が伝わらなくて怒っているのか、はたまた褒められて喜んでいるのか、子ども達の表情変化の多様性には驚かされますが、私も負けていられません。そこで思い切って顔をクシャクシャにしてしゃべるのですが、子ども達の自然体には完全に負けてしまいます。
ところで現代の若者は、昔に比べると表情の変化に乏しく、無愛想になっていると研究者は警告しています。赤ちゃんの時には役者を越えるほどの表現力があったのに、いつの間にか習慣的に感情を顔に出さなくなっているそうです。もしかすると、日本人には無愛想という遺伝子があり、武士の時代に戻っているなどと私は考えるのですが、本当はパソコン、ケイタイの使用が一因といわれています。こんな風に私は子どもの歯科治療を通して、いろいろなことを考えさせられるわけでして、表情豊かな社会の方がいいですね!

Written by 浜野 良彦


元気印に五重丸!


毎日が子ども達と顔をつきあわせる仕事なので、今時の子ども達の美しい顔立ちに驚かされます。綺麗に澄んだ瞳やツルツルの肌や鼻の形、どれをとっても私が子どもの頃とは比較にならないほど美形なのです。しかも目線を合わせて子どもと話をすることから歯の治療が始まりますから、目の重要性は体験的にわかってはいるのですが、世の中では、「目は心の窓」とか、「目先がきく」などと、口とは比較にならないほどに物事の良い例として用いられているようで、いわゆる口よりも上品な扱いになっているわけです。「口は災いの元」、「口さがない奴」などなど、下品な使い方をされているのが「口」のようで、挙句の果ては「目は口ほどにものを言う」となれば、『目の勝ち!』となってしまうわけです。ところが「喜ぶ」の語源は、容器に食物を盛り上げた形と「口」を合わせた造形漢字で、食物を食べてよろこぶ意味をあらわすのだそうです。食べることの楽しさや嬉しさが口で表現されていることに安堵しつつ、子どもの健康は、子どもの口の健康を守ることと考えている歯医者としては、「目」に勝ったような気にもなります。
ところが今時の子ども達の目には、イキイキした力強さが感じられないことが多いのです。ずっと昔の子どもには挑戦的な、ある時には反抗的な光った眼差しが合ったような気がしてなりません。いつも何かに寄り添うような頼りない目線を今時の子に感じるのは、私だけなのでしょうか。治療中にそんな子どもの目線を感じると、私も悲しくなるのですがそれでは仕事になりませんので、元気印に五重丸が付いたくらいの勢いで子どもに話しかけてしまいます。そんな習性が身に付いてしまっている私ですが、勢い余って脱線するのもいつものことですから、最終的には子ども達に助けられているのが本当のことのようです。

Written by 浜野 良彦


我が子の笑い声に答えてますか?


赤ちゃんの笑顔には、優しさと生きるパワーを感じますが、生後約四ヶ月までは、嬉しくても楽しくても笑い声を出さずに、静かにニコニコと微笑んでいるだけなのです。新生児では、いわゆる「のどちんこ」の位置と声帯とがうまく働きあっていないので、声をたてて笑い始めるのは生後四ヶ月頃からです。この笑い声を上げることが言葉の発達に重要な役割をしているので、赤ちゃんにキャキャキャとかハハハハッとか声をたてて笑えるような育児環境が大切なのです。しかも赤ちゃんが笑う時には、手を動かし足を突っ張るようにリズミカルに体全体で笑って、笑い声と手足の動きが、言葉をしゃべることと二本の足で歩くための準備をしていると考えられているのですから、不思議だらけです。ことほどさように赤ちゃんの笑いは神秘的で人を魅了するのですが、泣き声となれば事情は違ったものになります。
ところで私が子どもの歯医者だからといって、子どもの泣き声に慣れることはありません。その反対に子どもの笑い声には慣れてしまいます。確かに大人にとって笑い声よりも泣き声の方が、心がイラだちます。ところが、笑い声は心の中をスーッと通り過ぎてしまうようで慣れっこになってしまうのです。ですから笑っている子に対して安心するだけで、大人はそれ以上の反応や関心を子どもに対して表現しないようです。子どもの笑い声の大切さを知りながらも、いつのまにか、大人は笑い声に無関心になっているようです。大人たちよ、恥ずかしがらずに、子どもたちの笑い声に反応しようよ!

Written by 浜野 良彦


「生きる」を教えていますか?


子どもが嬉しそうに「虫バイ菌やっつけたよ!」とお母様に事細かくお話しする姿や、「あのね、あのね!」モゾモゾと口ごもってしまう子など、診療室での子ども達の様子に見入ってし、下手なテレビ俳優の数倍の表現力を持っていることに感動します。そんな中から、嬉しさや哀しさをそのまま表現できることの大切さを子ども世界に見ることができるのですが、大人同士でもそんな会話をしてみたいものです。現代の日本人は、大人になるに従い感情表現が下手くそになっていく民族のようです。私もその典型的日本人の一人で、子どもの頃には何となく上手くいっていたはずなのに、社会との関わりが増えると途端に苦手意識が頭をもたげ、自分の意見を言うことに躊躇するのです。その結果怖いことに、いろいろなストレスが少しづつ溜まっていくのだそうです。
自分の意見を他人に正確に伝えることの大切さ難しさ。その出発点は、赤ちゃんから始まる親子の会話なのです。親が子に、そして子が親に自分の意見や考え方だけでなく感情も含めてなんでも言葉にして伝えることが大切だと言われています。私たち大人は、日常的な会話から子どものアサーション(自分の考え方を他の人に言葉で伝える)能力を育てていることを忘れてはいけないのです。
ヨーロッパの学校教育で、「読む」[書く]「話す」と同じように「生きる」を教えています。人間らしく生きるために、他人との交わり方を、子どもの頃から体験学習するわけで、その中の1つに自分自身を大切にしたいのなら、他の人を理解するというのがあります。親子関係も同じで、出発点は子どもの意見を尊重して聞く親の姿勢から始まります。そんなこんなで、私の毎日の診療でも、「生きる」を子どもから学んでいます。



ブックスタート・パック


テレビやビデオが、乳幼児期の育児に悪い影響を与えているとほとんどの育児専門家が世のお母様方に警告しています。学童期に入るとテレビ、ビデオに加えてテレビゲームと携帯電話が要注意なのですが、大人社会も含めて現代のテレビ漬けビデオ漬けは、社会問題であることには間違いありません。こんな問題を解決するためにメディア・リテラシーという考え方で多くの子どもに関する専門家が集まって行動しています。私もその活動に参加しているのですが、知れば知るほど子どもの置かれている環境の悪さに怖くなります。
お母さんがテレビを見ながらの授乳は止めましょう!とか、我が子が二歳になるまでテレビに頼る育児はやめましょう。つまり子どもにテレビを見せないようにしましょう!などと提言されているのが米国育児事情ですが、さてさて日本ではどうでしょうか?テレビやビデオが駄目というならいったいどのように育児していけばよいのか困惑します。イギリスではブックスタート制度が自治体のほぼ全域にありますが、日本ではまだまだ知られていません。この制度は、「赤ちゃんと絵本を通して楽しい時間を分かち合うこと」が目的で乳幼児絵本2冊、赤ちゃんと読書の時間を持つときの保護者向けのイラスト・アドバイス集、おすすめの絵本集、図書館の案内などが布製バックにまとめられたブックスタート・パックを受け取ることから始まります。その結果はテレビを見ずに絵本に興味を持ち、親と子の会話が弾むと言うことになります。外国では大きな成果を上げていますが、日本では2001年から始まり、全国506自治体で実施されていますが、福岡市はこの制度は導入されていません。
子ども達がテレビやビデオに頼らないで育ったら、と考えると夢が広がります。世の中がもっと良い方向に変わると信じています。でもでも、自然の中で遊んだり親子で絵本を読んだり、テレビやビデオに頼らないでも良い育児環境を作ることを先に実行したいものですが、いかがなものでしょうか現実は!

Written by 浜野 良彦


母性と父性


母性は女性が生まれながらにして持ち合わせている本能だと信じられていたのですが、今では母性は学習して身に付くものだと考えられています。この研究をしている学者の弁を聞くほどに、なるほどと思いながらも、私が母親に抱いている母親像を否定されているようで男の私としては、何とも複雑な心境です。女性が母親になってから赤ちゃんが大きくなるにつれ母親に母性が身に付いてくることになるわけで、赤ちゃんを育てる苦労から生まれる新しい女性力が母性ということになります。では、父親の場合はどうなのでしょうか。育児を語る時、父性という言葉を頻繁に使わず「父親の役割」と言い表すことが多いようで、母性愛のほうが父性愛よりも優位にあるように思われてなりません。さてさて、皆さんはどのようにお考えでしょうか?
私は子どもの歯医者ですから、時にはお母さんの心意気でお母さんの優しい役割をしたり、時にはお父さんの厳しい役割をしたり、ある時にはお友達的役割をしたりと、まさしく一人で何役もこなさねばなりません。ちょうど舞台役者の早変わりのような役者ぶりで治療をすることになるわけです。そんな姿を家族に見られることを想像するだけで恥ずかしくなるほどに、それぞれの役にのめり込んでしまわないと治療中の子どもの本心を知ることは難しいのです。「優しい母親の褒め言葉」や「温かい母親の諭す言葉」とか「厳しい父親の励ましの言葉」や「力強い父親の褒め言葉」などなど、汗だくで子どもと競い合うのが子どもの歯医者の仕事だとわかりながらも、これが結構楽しくもあり辛いことで
もあるのです。
ですから、子どもを育てることが母性を育てるように、子どもの歯科治療が私の人格形成にとても大きく影響していることを実感している毎日です。子ども達に感謝、感謝!

Written by 浜野 良彦


自慢、高慢、我慢そして頑張る人間


子どもの歯科治療での褒め言葉に、「頑張る」があります。「泣かずに良く頑張ったね!」とか「頑張り屋さんだねえ!」とか「この次も頑張って来るんだよ!」と使います。子どもが嫌がる歯の治療を上手にできるようにと、励ましの言葉でもあるのです。私も意識して使っているようで、「頑張れ!頑張れ!」なのです。お母様方も治療が始まる前には必ず「頑張ってきなさい」と言って子どもを治療に送り出すのです。歯の治療の時だけではなさそうで、嫌になるほど大人は子どもに言っているので、世の中頑張る人間だらけです。ところが、子どもは大人に褒められたり、励まされていることはわかるのですが、「頑張る」ってどうすればいいのか本当の事が分かっていないような気がしてなりません。大泣きしても、大暴れしても本人は頑張っているわけです。治療が終わると、「僕、頑張ったよ!」母親に訴えるように泣くのです。
「どこまでも忍耐して努力する」ことが頑張ることなのですが、言葉の源は、「我を張る」から来ているそうです。現代風に解釈するとわがままを意味することになります。
最近私は、「頑張る」を減らして、「ガマンする」と言い換えています。以前は、語意が強く子どもには絶対に使わない言葉の一つだった「我慢」なのですが、「ほんの少し我慢しよう!」「ここは我慢しなくちゃ、ダメッ!」などです。言葉で子どもを圧倒しているようで嫌いな言葉でしたが、子どもたちはとてもよく反応してくれます。シクシク泣いていた子が我に返り私の言葉に耳を傾けます。大騒ぎしていた子が嫌なことにチャレンジしてくれます。ところが昔は強情者を我慢者といい、「我慢」とは自分を偉く思い、他を軽んずることで高慢を意味していたのです。仏教語で、自慢の意味でもあったわけで、さてさて、子どもに使う言葉の大切さを重く感じる毎日です。

Written by 浜野 良彦


ポリフォー二な絵


私は、駒形克己の絵本がこの上なく好きです。デザイナーを本職とする駒形さんの描く絵本の世界は、今まで出会った絵本とは違って大人も子どもも一緒に絵本の世界を楽しめるのがスゴイのです。とても不思議な感動を感じます。とくに「NORA」と「HANA」がイイですね。すでに5回ほど福岡でワークショップが開催され、ジワジワと知名度が上がっているようです。
子どもには絵本が欠かせません。一人で絵本に陶酔しきる子、興奮する子。いろんな読み方があることを待合室で待つ子ども達の姿から知ることができ、興味深く見とれてしまうのです。お母さんに読んでもらっている子は楽しげですし、兄弟姉妹でワイワイやっているのもイイものです。お母様方の悩みはどのような絵本を買えばいいのか、買ってみても子どもが興味を示さないなどなど、簡単なようで結構むつかしいようです。何歳用と明記されていてもそれを目安には買わない方がいいと言われています。我が子が何に興味を持っているのかとか、大人の視点で子どもにどんなことに興味を持たせたいのかとか、目的にあった絵本の選び方が重要で、興味の持ち方に個人差があり年齢で決めるものではありません。
私たちの医院の待合室には、お母様と子ども達にお薦めの絵本110冊を準備しています。受付保育士がその運営を任せられ、皆さんに楽しんでもらっています。勿論、駒形克己さんの作品も沢山あります。
子どもと絵本の関係を調べていくと、絵本の分野にもポリフォニー的考え方で作品が作られていることを知っておくべきでしょう。ポリフォニーとは、あちらこちらで同時進行する形式で、NHKで放映されている{ER緊急救命室}もその一例で、主人公やテーマが際立つわけではないのですが、ジワジワと興味がわいてくる手法を取っているのです。ですから、大人が読んでも面白い絵本が多くなったのです。今一度、我が子のための絵本について考えてみてはいかがでしょうか?

Written by 浜野 良彦


日本の色「藍色」の謎と子どもたち


外国人から見た日本を「色」でイメージすると「藍色」なのだそうです。小泉八雲が日本を紹介した文章に、横浜の町並みが藍の瓦に藍染めのノレンでその美しい情景を称えたことが、外国人の持つ日本のイメージカラーになったのだそうです。日本人は古来から色彩豊かな民族だと諸外国には評判なのだそうですが、日本人である私はそんな認識はありません。平安時代の着物の色や、歌舞伎、浮世絵などなど私たち日本人は色彩感覚あふれた遺伝子を持っている事を知ると、現代の若い世代の服装には納得できるところがあります。
そんな目で来院する子供たちの服装をみると、なるほど!と思える子供たちばかりです。とりわけ小学生のお姉さんたちは可愛い色のオンパレードです。ところが中学生になると落ち着いた色を着こなすのも女の子たちで、男の子は黒や灰色ばかりです。中学校からの制服の影響でしょうか。でも保育園や幼稚園の最近の制服はとてもとてもオシャレな色合いでデザインも素敵なものばかりです。
最近の子どもたちは、着ている物を褒められることを特に喜びます。ツヨイとかエライとか抽象的な褒め方より素早い反応を示すのは、身につけている物を褒めるなど目に見える物を具体的に褒めることのようです。私が子どもの頃の思いでは、「いい子だ」と頭をなでられるだけで有頂天になっていた頃とは大きな違いです。子どもの歯科治療では、褒めることに始まり、褒めることで終わりますが、最初と最後では褒める内容は大違いです。最初は子どもが具体的に見える物を褒め、終わりは治療中の強さや頑張りや我慢したことを抽象的に褒めちぎります。子どもは終わりの褒め言葉の方が好きなようで、心から喜んでくれていることに嬉しさを感じるのですが!?外国から見た藍色の日本国には、本質が藍色のような力強い子どもたちでいっぱいなのかもしれません。

Written by 浜野 良彦


快適睡眠は体内時計と地球時間


都会の夏の夜は、蒸し暑く寝苦しい夜。田舎の夏の夜は、夜風も涼しげな心地よい夜。これが通り相場ですが、熱帯夜などと天気予報で聞かされるだけで、睡眠障害をおこしそうになってしまします。私が子どもの頃といえば、蚊帳の中で、母に団扇であおいでもらいながら寝たことを思い出します。団扇から扇風機そしてエアコンと夏の夜の空気は、今となっては人工的な空気を吸って眠っていることになるわけです。
ところで、今時の子ども達の睡眠に異変が起きているのをご存じですか?子どもの睡眠の調査結果では、入眠時間が0時を過ぎると翌日はイライラする子が多いのだそうです。しかも朝食抜きの子が多くなり、とても健康的な生活をしているとはいえない状況のようです。ヒトは約25時間の体内時計を持っていて、24時間の地球時間にあわせるために、毎夜眠ることで体内時計をリセットしているのだと言われています。ですから心地よい眠りが、毎日の活力ある生活リズムに子どもを合わせることがあります。しかもそれが子どものためになると考えがちです。とくにお父さんの立場になってみると、夜遅くまで働いて帰宅すると可愛い我が子は既に寝ているとなると寂しいものです。日頃遊んでやれないからと言って、子どもに夜更かしは禁物です。
ヒトは人生の1/3眠っていると言われていますが、「子どもに早起きをすすめる会」が関東を中心にその活動が注目されています。という私も会員の一人なのですが、「早く寝なさい!」とお小言をいうよりも、早起きを習慣づけると子どもは早くに寝てしまいます。そして自然に体内時計のリセットをしてくれますので、日中が活動的で健康的な生活リズムを身につけることになるわけです。育児真っ只中のお母様方には無理かもしれませんが、そこは我慢して、子ども達には快適睡眠をプレゼントしたいですね。

Written by 浜野 良彦


「マザリーズ」してますか?


「マザリーズ」って初めて聞く言葉でしょうか?それは、まだ話すことができない乳幼児に語りかけることで、JapanにeseをつけてJapanese(日本語)と言うように、MatherをMotherese(マザリーズ)と言い、母親語と訳しています。日常会話とは違った言葉のテンポやイントネーションが特徴で、母親が赤ちゃんに語りかけるときの言葉の調子や抑揚でそれを聞いている赤ちゃんは、いろんなことを敏感に感じ取っているのです。いくら疲れていても、安心できる「マザリーズ」、心地よい「マザリーズ」を心がけなければなりません。お母さん側によほど「可愛い」という感情が無いと「マザリーズ」もうまくいかないのだそうです。テレビを見ながらの授乳などは、もってのほか。油断は禁物です。

ところで、私は男性ですから、母親にはなれません。母親のような存在にはなりたいと思ってはいるのですが、まだまだなりきれてはいないようです。子どもの歯医者として日々努力しているのですが、母親の威力にはかないません。機嫌良く治療が終わって、うまくできたなと思いきや、お母さんの顔を見たとたんに「ウエー!」と泣かれては、ヘナヘナと座り込みたくなる心境になります。とは言っても負けるわけにはいきません。治療中の私たちの子どもへの話しかけ方は、まさに「マザリーズ」に近いものがあります。子どもの感情に共感しながら、子どもの訴えに同調しながら、言葉のテンポとイントネーションで子どものこころをとらえていくのですが、身も心も快調でないとうまくいくわけがありません。まさしく、その時、その時が真剣勝負なのです。
そんなこんなで、今時の子ども達を見ていて感じることは、話しかけや言葉に敏感に子ども達が反応しているのに、それに気づいていない大人達が多いことなのです。家族間の会話が少なくなっているのは、さてさて子どもの責任でしょうか?私はと言えば、子どもに嫌われても嫌われても負けずに懲りずに「マザリーズ」しています。

Written by 浜野 良彦


子どもは遊びの達人、そして文化人


音楽の三大要素は、リズム、旋律、ハーモニーと言われています。そして乳児が音楽を聞き分けることができる年齢は生後6〜8ヶ月頃からだそうで、この頃には音楽の三大要素を識別できるのです。しかも乳児の聴覚が機能し始める出世前3ヶ月頃から、いろいろな音を記憶の片隅にとどめながら、はじめて音楽を聞き分けることができるようになるのだそうですから、赤ん坊の秘めたるパワーに驚きを感じます。人が歌うことは、丁度歩く、走るが遊びとしてのダンスになるように、声を出し、言葉をしゃべることが、歌を歌うという遊びに変化していくのだそうです。このように日常的な動作が遊びに変化する瞬間からそれが文化(カルチャー)と呼ばれ出すことに、私はおもしろさを感じます。文化人と呼ばれる人たちは確かに遊びの達人ばかりです。そうすると子どもは遊びの達人ですから生まれながらの文化人ということになり、なるほどと納得する私です。
私たちの診療室では沢山の遊びの達人、すなわち文化人たちが、所狭しと活発な行動をしています。治療前後は飛んだり跳ねたり踊ったり、治療中は泣いたり笑ったり奇声を発したりと。子どもの文化は躍動感がありすぎ、私は後をついて行くのに精一杯で、息切れしそうですが、治療中は負けてはいないと競い合って何とかやっています。 医療の分野もこの文化的要素を使い治療効果を上げていることをご存知でしょうか。 例えば、病室の壁紙の色使い一つで、病状が良くなり入院日数を短縮できることがわかっています。人を癒す音を用いることで、心の傷を癒し体に調和をもたらしているのです。色や音や香りはこれからの医療には欠かせない重要な要素となっていますが、子どもの歯科治療で文化的な医療(デンタル・カルチャー)を目指している私としましては、歯を削るあのキーンという機械音を耳にするたびに厳しい道程に愕然とするのでした。

Written by 浜野 良彦





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